久々の投稿になります。昨年、数次相続(被相続人が死亡した後、遺産分割協議をしないうちに相続人が死亡して次の相続が開始された状況)の依頼がありました。今回の依頼人は後々、相続登記をしないと罰則になることを知って依頼された案件でした。当案件は米国籍の相続人も居たことから、戸籍謄本や印鑑証明書、住民票の写しなどが発行されず、通常とは異なる手続きが必要でした。外国籍の場合、その国の死亡証明書や公証人の証明書が求められます。米国と言っても州で様式等が異なるため、米国の法律事務所に依頼しました。数次相続は通常の相続の倍以上の労力が掛かりますし、報酬代金もそれなり掛かります。今年の4月1日から相続登記申請の義務化が施行されたこともあり、簡単に内容を記載したいと思います。
2021年3月5日に民法や不動産登記法などの改正案が閣議決定され、2024年 4月1日から相続登記の申請が義務化されました。全国で所有者不明の土地問題が急増し、公共事業や災害復旧の工事、民間取引の大きな妨げとなり、更に不法投棄、不法占有者などの問題が生じ、周辺の治安や公衆衛生に悪影響を及ぼす恐れがあるとしています。
■相続登記の義務化には3つのポイント
①相続登記の義務化は2024年4月1日開始
②不動産を相続したことを知ったときから3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料
③過去の相続分も義務化の対象
■相続人申告登記の申出
相続登記の申請期限は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」です。相続登記ができないときの救済策として、この「相続人申告登記」があります。音信不通の相続人がいる場合や相続人間で遺産分割協議が纏まらない場合、この制度を利用して、不動産の所有者(登記名義人)について相続開始と、自分が相続人であることを法務局に申し出れば、それで相続登記義務を履行したことになります。しかし不動産の所有者として第三者に売却したり金融機関からお金を借りるための担保するためには、この申出だけでは足りず、あくまで正式な相続登記を申請する必要があります。
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何故か最近、離婚に対する問合せや離婚協議書作成依頼が多くなっています。コロナ渦の影響でしょうか?このコロナの影響で、外国人(インバウンド)の申請依頼が減った事もあり、当事務所としては幸いですが、あまり気が進まない業務でもあります(気持ちが暗くなります..)その中で離婚公正証書を作成したいという依頼内容を簡単に紹介しようと思います。この案件は旦那様からの依頼だったのですが、奥様側から公正証書にしてほしい旨の要望があったとの事。この夫婦には2人の未成年の子供がおり、その親権者は母である奥様に定め毎月、養育費が発生することになります。その他、財産分与が少々、慰謝料は無しです。ヒアリングにより要件書を作成し離婚協議書を当事務所で作成しました。離婚協議書までの依頼であれば、ここまでの作業となりますが、この案件は離婚公正証書なので、この纏めた要件書ないし離婚協議書を、近場の公証役場に送り、それを基に公証人が公正証書を作成します。先ず、離婚協議書と離婚公正証書とは何が違うのか?もし養育費など金銭債務の履行を怠ったとき、離婚協議書の場合は訴訟を起こして裁判所で確定判決を得ることが必要です。この確定判決を債務名義として、債務者の財産差し押さえなどの強制執行をします。一方、離婚公正証書の場合、高い証拠力、証明力という法的効力があり、裁判所の判決を経ることなく強制執行手続きが可能となります。公正証書は強制執行の機能を備える執行証書になるのです。離婚する夫婦間における権利と義務の関係を安定させるうえで効果的な方法と言えます。この案件の場合、親権者である奥様側が将来の不安感を軽減させ安心感を得る選択だったと思います。手続きは原則当人2人が公証役場に出向き署名・押印した後、公正証書謄本を取得します。この2人の内1人だけが代理人を委任できますが、2人同時に代理人の委任はできません。公正証書化に伴う公証役場の手数料は離婚契約で定める総額が1,000万円以内なら17,000円程度です。一般的にこれらの作業は、離婚の届出前に作成しておくことが安全であると言えます。
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先日公正証書遺言書の作成依頼がありました。何故、遺言書を残しておきたいかと言うと、息子に自分所有の分譲マンションを相続したいとのこと。えっ?と思いましたが、話を良く聞くと旦那さん(故人)の連れ子だと言うのです。このまま自分が死んだらこの息子に相続権は無く相続できないのです。方法は2つあります。1つは、養子縁組の申請をして養親と養子の関係にすること。もう1つは、遺言書を作成することです。本人は今更、養子にすることには抵抗感を感じたらしく、遺言書を作成することを選択されました。それも公正証書遺言です。こちらかもお勧めしたこともあり納得してくれました。実は本人からの要望として、①この息子には遺言の事を知られたくない。②亡くなった後の手続きを簡素化したい。との事です。①の対策として、現在、本人とこの息子は全然別の地域に住んでいます。公正証書遺言の場合、この息子の住民票が必要になります。ここは職務請求で住民票は所得しました。なのでこの息子が気付く事はありません。②の場合、自筆証書遺言では亡くなった後に検認手続きが必要で相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に検認を請求しなければならないとされています。しかし、公正証書遺言は裁判所の検認の手続きが不要で、自筆証書遺言よりもはるかに安全、安心、確実な遺言なのです。この公正証書遺言は公証人が作成するので、あまり気にすることは無いのですが、法定相続人以外に遺言書を書く場合、「相続」では無く「遺贈」するという文言になります。誰もが何れ来る「終活」、色々と考えさせられる事が多々ありそうです!
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行政書士業務の中で特に外国人向け業務として国際結婚の届出や外国人の在留や帰化申請などは本国から証明資料を取り寄せるケースが多々あります。そのほとんどは日本の行政機関に提出する際、翻訳が必要になります。 主として戸籍謄本・ 戸籍抄本・結婚証明書・出生証明書・卒業証明書など翻訳を添付して認証を取ることをご提出先から求められている場合は、私文書として扱われます。 英語圏や身近な中国語、韓国語などは、需要が多いこともあり、またスタッフも豊富なこともあり、比較的安価で翻訳している業者が多い様です。しかし、ちょっとマイナーな言語になると一気に価格が上がります。先日、インドネシア語の翻訳を見積りしましたが、英語文書の2倍から3倍近くに跳ね上がりました。お客様に事情を説明するも当然お客様への負担も大きくなることもあり業者選択が大変でした。以前もロシア語の翻訳を頼んだ際も結構高額な金額を請求されたケースもありました。 翻訳業者は全国各地に存在していますが、やはり首都圏である東京近郊はじめ政令指定都市に集中している様です。翻訳業者は入れ替わりが結構激しく、昨年頼んだ業者がもう無くなっていたり、移転したりする業者も見受けられます。一番悩ましいのが同じ見積りを依頼しても見積金額に大きな差があることです。見積基準も翻訳業者でマチマチです。単価/枚か単価/字でもやはり違ってきます。そうすると頼む側としては安い方がと判断しがちですが、翻訳の精度も重要なファクターなので結構悩ましい判断を強いられます。やはり地域性やスタッフ環境などの違いによるものなのでしょうか?
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久々に相続手続きの依頼を頂きました。いつも思う事ですが、人の財産を扱う事は結構神経を使います。相続手続きは相続人の確定から始まり、相続財産の調査、評価そして遺産分割の作成。そして最終段階として不動産の登記や預貯金の解約・払戻し手続きという流れで進めます。今回,手古摺ったのが預貯金の調査でした。一番間違いのない方法は金融機関から残高証明を取得することでその故人の相続財産を正確に把握することができます。しかし、相続人全員の署名した委任状が必要になり手間が掛る事、それも各金融機関ごとに行う必要があります。 今回のお客様は「全部預金通帳を預けるから」と言われ、通帳から残高を拾うことにしました。それが結果的に仇になってしまいました。預貯金は普通預金、定期預金、貯蓄型預金、外貨預金、外貨定期などがあります。これが一冊ずつ独立していれば良いのですが、普通預金に定期預金が入っていたり、ある金融機関では一つの普通預金に3つ付随しているケースがありました。一覧表を作成してお客様に再確認するも「それで良いはず間違いない」と言う始末。その後、解約・払戻し手続きを代行した際、幾つか漏れていることが発覚しました。このお客様は預貯金の分散化をしていたらしく金融機関で6機関9通帳ありました。これでは自分でも把握(失念)できていなのも無理はありません。今回の反省点は手間を惜しまない事。お客様の言葉を信用しない事。この2点です。次回にこれを生かせれば良いのですが...
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先日、ある客様から、最近話題になっているボートクルージング事業を始めたいとの依頼がありました。海事代理士資格所持者としては依頼を断る事もできず受理しました。旅客船には、不特定多数のお客様を乗せて運航する事業「定期航路事業」と、屋形船やプレジャーボートにお客様を乗せてのクルージングなどお客様の都合に合わせて就航する「不定期航路事業」の2つがあります。尚、不定期航路事業は、旅客を乗せて運航する「旅客不定期航路事業(旅客定員13名以上)」と「内航不定期航路事業(旅客定員12名以下)」とに分かれます。
先ず、この事業を開始するに当たり、小型船舶操縦免許の他、「特定操縦免許」を取得する必要があります。この「特定操縦免許」は小型旅客安全講習を受講すれば取得できますのであまり神経質なる必要はありません。自動車運転免許に例えると2種免許みたいなものです。ただこれを持っていたとしても何も届け出ずに事業を始めることはできません。(自動車でいうと白タクを意味します)では実際に屋形船やプレジャーボートを使用してのクルージング事業するには?
◆旅客不定期航路事業(許可制)
一定の航路に旅客船(13人以上の旅客定員を有する船舶)を就航させて人の運送をする定期航路事業以外の事業をいいます。この事業を営もうとする者は、航路ごとに地方運輸局長の許可を受けなければなりません。ただし、年間(暦年)3日間以内に限り、「一定の航路」に旅客船(13人以上の旅客定員を有する船舶)を就航させて人の運送をするものは許可ではなく、届出で対応できます。
◆内航不定期航路事業(届出制)
「人の運送をする内航不定期航路事業」とは、定期航路事業以外の船舶運航事業で、かつ、旅客不定期航路許可事業(旅客船(旅客定員13名以上))を除いたものをいいます。つまり旅客定員12名以下の場合です。今回の依頼はこの事業の申請でした。小型船舶での屋形船やイルカワッチングなどもこれに該当します。
その他の事業として「遊漁船」を耳にしたことがあるかと思います。これは「船舶により利用客を漁場に案内し、釣り等の方法で利用客に魚介類を採捕させる事業」と定義されています。これも内航不定期航路事業と類似していて、「遊漁船業務主任者講習会」を修了し「遊漁船登録業者」の届出をすることで営業を開始できます。
更に事業申請届出時には船客傷害保険加入や安全管理規程、安全統括管理者・運航管理者も届ける必要があります。尚、我々(行政書士及び海事代理士)が申請代行する場合は「内航不定期航路事業」で12万~15万円程度、「遊漁船」で5万円程度の手数料になります。
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政府は、人手不足が深刻な分野の労働力を補うため、外国人の受け入れ拡大へ取り組む方針です。現行制度では、高度な専門性を持つ人材を除き、外国人労働者を積極的に受け入れていないのが現状です。今回検討する新たな在留資格「特定技能(仮称)」は就労を目的とする制度で、農業、介護、建設、造船などの分野が対象となります。政府は介護分野は毎年1万人増、農業分野では2017年の約2万7千人が23年には最大10万3千人、建設分野で17年の約5万5千人を25年時点で30万人以上を確保することが必要と試算しています。今後の新資格の動向及び在留資格手続きの簡素化など注目していきたいと思います。
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